ポートフォリオ設計

― 複数戦略でリスクを分散する構造 ―

ドローダウンを小さくしたい。

運用を続ける中で、多くの人が行き着くテーマです。

ここで誤解されやすいのは、
「勝率を上げれば安定する」という考え方です。

しかし実際にドローダウンを浅くする最も強力な方法は、
単体の精度を上げることではありません。

分散です。

ポートフォリオ設計とは、
戦略の優劣を競うことではなく、
崩れ方を分ける構造を作ることです。

 

単体EAはなぜ不安定になるのか

どれだけ完成度の高いロジックでも、
すべての相場局面に対応することはできません。

相場には局面があります。

・トレンドが続く時期
・レンジが続く時期
・ボラティリティが拡大する時期
・縮小する時期

戦略には必ず得意と苦手があります。

つまりドローダウンは偶然ではなく、
局面依存で発生する構造的な現象です。

単体EAが不安定に見えるのは、
この局面依存が一点に集中するからです。

 

分散とは「数を増やす」ことではない

ポートフォリオ設計で重要なのは、
戦略の数ではありません。

重要なのは、崩れ方が違うかどうかです。

分散には主に3つの軸があります。

1. ロジック分散

トレンド型とレンジ型。
順張りと逆張り。
押し目型とブレイク型。

同じような条件で同じように負ける戦略を集めても、
同時に沈みます。

見るべきは「勝ち方」ではなく、
負け方の違いです。

2. 時間分散

相場は時間帯によって性格が変わります。

・東京時間
・ロンドン時間
・NY時間

同じ戦略でも、稼働時間が変われば振る舞いが変わることがあります。

時間を分けることは、
局面を分けることでもあります。

3. 市場分散

銘柄を分ければ、値動きの特徴も変わります。

ただし、市場分散は万能ではありません。
リスクが一方向に傾く局面では、相関が一気に高まることもあります。

だからこそ大切なのは、

「増やす」ことではなく、
重なりを減らすことです。

 

DDは重ならなければ浅くなる

ポートフォリオ設計の核心はここです。

ドローダウンは、重なると深くなります。
重ならなければ、平準化されます。

単体で10%のDDがある戦略を複数持っていても、
それぞれが異なる局面で削られるなら、
全体のDDは滑らかになります。

重要なのは、

・最大DDの大きさ
ではなく
DDの同時性です。

同じ日に同じ理由で崩れる構造は避ける。

これが設計の視点です。

 

分散は安全装置ではない

ここで一つ明確にしておきます。

分散しても、全体が崩れる局面はあります。

急変動、想定外のイベント、
ボラティリティの急拡大。

分散は万能ではありません。

しかし、揺れ幅を平準化することはできます。

揺れ幅が小さくなれば、

・ロットを極端に落とさずに済む
・停止基準に到達しにくくなる
・回復に必要な期間が短くなる

結果として、継続が可能になります。

私は「勝つ設計」よりも先に、
続けられる設計を優先します。

 

単体の強さより、全体の安定

ポートフォリオ設計は、

優秀なEAを探す作業ではありません。

役割の違う戦略を組み合わせる作業です。

見るべきポイントは3つです。

  1. 負け方が違うか
  2. 削られる時期が重なりにくいか
  3. 全体の資金曲線が滑らかになるか

単体のPFよりも、
全体の安定性。

爆発力よりも、耐久性。

それが分散の目的です。

 

現在の運用について

現在は、性質の異なる2系統の戦略を併用しています。

どちらが優れているかではなく、
崩れ方が違うことを重視しています。

単体の強さではなく、
全体としての安定を優先する設計です。

 

まとめ

ポートフォリオ設計とは、

勝率を上げる話ではありません。
未来を当てる話でもありません。

それぞれの戦略の崩れ方を分散させ、
全体の振れ幅を抑える設計です。

単体依存を避けること。
役割を持たせること。
全体としての揺れ幅を整えること。

これが、複数戦略で運用する意味です。

次は、この分散を「時間」という軸で掘り下げます。

短期の成績に振り回されない設計。
相場環境の波をまたぐ考え方。

時間分散の話に進みます。